

アテンションマーケティングとは、ユーザーの「注意(Attention)」を獲得することを起点に据えたマーケティング手法です。商品やサービスの価値を伝える前に、まず目に留まり、内容に触れてもらえるかどうかを重視します。
広告があふれる現代の環境では、情報が表示されるだけでは十分とはいえません。そのため、SNSの投稿の滞在時間、動画の視聴完了率や広告の視聴時間など、実際に注意を向けてもらえた量が価値として評価されるようになりました。
アテンションマーケティングは、こうした注意の獲得を出発点に、インタレスト(興味・関心)を高め、最終的にCV(コンバージョン:購買や問い合わせなどの行動)につなげるという一連の流れを前提に設計します。

カスタマーアテンションとは、消費者がSNS上で特定の投稿に目を留めたり、広告などを一定時間見続けたりすることで特定の情報やブランド、コンテンツに注意を向けている状態を指します。注意が向いている状態が生まれて初めて、情報は認識されて内容が理解されるといえます。
そのため、インタレストに至らない注視段階の層を広げて注意が向いている時間を積み重ねていくことが、将来の顧客育成につながると考えられているのです。カスタマーアテンションは、ブランド理解が始まる最初の入口といえるでしょう。

アテンションがマーケティングの重要な指標として注目されるようになった背景には、ユーザーの情報接触のあり方や、広告・SNSを取り巻く環境の変化があります。
ここでは、アテンションの価値が高まっている理由を、いくつかの視点から整理します。
これまでも「AIDMA(注意→興味→欲求→記憶→行動)」や「AISAS(注意→興味→検索→行動→共有)」といった購買行動モデルにおいて、最初の段階として「注意を向けてもらうこと」が前提とされてきました。
近年はInstagramやTikTokのように、SNS上で発見から購入までがシームレスにつながる環境が整ったことで、アテンションの価値はあらためて注目されるようになりました。
Instagramのショッピング機能やTikTok Shopの仕組みについては、以下の記事でくわしく解説しています。


さらに、広告が実際に画面内で表示されているかどうかが評価され、SNS上においては投稿の初動の反応が表示機会を大きく左右するようになりました。くわえて、ショート動画の普及により、たった数秒間だけで視聴を続けるかどうかを判断される場面も増えています。
こうした変化によって「まず目に留めさせること」そのものが成果の源泉と捉えられるようになりました。
若年層を中心に、TikTokやInstagramのストーリーズのように、短尺で瞬時に視聴を判断するメディア環境が定着しました。ユーザーは見るか飛ばすかを瞬発的に決めており、後者の場合は0.5秒ほどでスキップされるともいわれています。
このような環境では、まず注意を向けさせること自体が最も難しい工程になるため、認知前の段階でアテンションを獲得できることは価値の高い接点と捉えられています。
また、SNSのアルゴリズムと相性が良い点も特徴です。投稿直後に高いアテンションを集めたコンテンツほどおすすめ枠に表示されやすいといわれているため、リーチが一気に拡大します。
ショート動画やミームが短時間で多くのユーザーの反応を引き出しやすい背景には、こうした仕組みがあります。
近年、企業アカウントがミームを自社ブランディングに用いることも少なくないですが、そのミームマーケティングについては以下の記事で紹介しています。
近年、広告をブロックするサービスの普及やCookie規制の影響により、行動履歴にもとづいたターゲティングが以前ほど機能しにくくなりました。「誰に届けるか」を細かく定める手法だけでは、十分な成果を出しづらい状況になりつつあるということです。
こうしたなかで注目されているのが「実際にユーザーの注意を引けたかどうか」を示す定量データです。広告がどれだけ表示されたかではなく、どれだけ見られたか、どこまで視聴されたかといったビューアビリティ(視認性)指標や視聴完了率が評価の軸になり始め、KPI(重要業績評価指標)としても重視されるようになりました。
ターゲティングの精度に頼るのではなく「注意を獲得できた事実」そのものが価値として扱われる流れが強まっています。

アテンションマーケティングでは、注意を獲得することを目的に、広告やSNS、屋外広告などさまざまな施策が活用されています。
ここでは、代表的な施策例をいくつか取り上げて、アテンションを生み出す仕組みや強みを整理しましょう。
広告領域では、ユーザーの注意をどのように確保し、維持するかを重視した広告手法が活用されています。特にインタースティシャル広告は広告が全画面表示されるため、短時間でもユーザーの注意を引きやすいでしょう。
特にインタースティシャル広告でよく見られる縦長動画広告のように、視聴体験そのものに没入させるアプローチも広がっています。スマートフォン画面を大きく占有することで、スクロールを止め、一定時間の視聴につなげやすくします。
また、広告が実際に表示され、見られたかどうかを重視する視認性保証(Viewable)広告の考え方も広がっています。単なる露出ではなく、注意を獲得できたかを評価軸とする点が特徴です。
さらに映像やストーリーを通じてブランドの世界観を伝えるブランデッドムービーも、売り込み感を抑えながらアテンションを引き留める広告表現として活用されています。
ブランデッドムービーについてくわしくは以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
SNS上は特に短い時間で注意を引く必要があるため、最初に目に入る要素を強く設計する施策が多く用いられています。
たとえばTikTokのショート動画においては、視聴を続けるかどうかが瞬時に判断されるため、冒頭の動きやテロップ、サムネイルによって最初の0.5秒で注意を引く構成が講じられています。
X(旧Twitter)はテキストコミュニケーションを主軸とするSNSですが、タイムライン上で複数の画像を同時に一覧表示できる特性があるため、視覚情報が注意喚起の役割を果たす場面も少なくありません。
画像同士の組み合わせやストーリー性が投稿を止めて読んでもらうきっかけになりやすいといえるでしょう。
また、即時性の高いSNSであることから、ミームや話題性のある画像が拡散されやすく、テキストに入る前段階で注意を引く要素として機能するケースも見られます。
ビジュアル分野に強いといわれているInstagramは、ユーザーが横スクロールすることで段階的に写真や動画を見せる設計のため、まず1枚目のインパクトを重視してクリエイティブを制作しましょう。
また、特にブランドの統一感が求められるプラットフォームでもあるので、イメージ軸がブレない程度に写真、動画のテイストを変えてみて、反応の違いを見ながら施策を進めてみてください。
こうした視覚的アテンションを活用することで、情報への接触機会を広げることにつながります。SNSでは、この初動のアテンションを最大化すること自体が、成果につながる施策として組み込まれているのです。
OOH(Out of Home:屋外広告)は、意図して見に行かなくても視界に入る点を活かし、アテンションを獲得する施策として活用されています。なかでも、3Dビジョンや巨大ディスプレイのように空間そのものを使って視線を引く表現は、通行中の人の注意を強く引きつけます。
なお、OOH広告についてくわしくは以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
渋谷や新宿といった人通りの多いエリアでは、大型OOHを通じて一瞬で目に留まるインパクトを生み出す施策が多く展開されています。映像の動きやスケールによって、通行中の視線を自然に集める設計です。
OOHの特長は、ユーザーの操作や選択に依存せず、リアル空間で半ば強制的にアテンションを生み出せる点にあります。スクロールやスキップができない環境だからこそ、より注意を向けさせる施策として機能するでしょう。

広告は、画面上に表示されてもそのまま流されてしまうケースが少なくありません。そのため、インプレッション数やクリック率だけでは、広告が実際に機能したかを把握しにくいという課題があります。
広告の成果は、内容が見られ、認識されることを前提に生まれます。繰り返しになりますが、こうした前提から、広告が実際にどのくらい表示され、一定時間視認されたかを示すビューアビリティ指標や、動画の視聴完了率といった「注意の量」を測る指標が重視されるようになったのです。
この考え方は、プラットフォーム側のインサイトにも反映されています。配信数や表示回数だけでなく、滞在時間や視聴の深さを重視する設計が進み、アテンションの質が成果判断に組み込まれるようになりました。
また、インフルエンサー起用においても、フォロワー数より実際の視聴数やエンゲージメントが評価される場面が増えています。どれだけ多く表示されたかではなく、どれだけ注意を向けてもらえたかという価値が高まっているのです。
なお、インフルエンサーマーケティングについては以下の記事でくわしく解説しているので、あわせてご覧ください。

アテンションマーケティングを成果につなげるには、単に注意を集めるだけでなく、その後の流れまで含めて設計する視点が欠かせません。
ここでは、アテンションを起点にインタレストや次の行動へつなげていくための基本的な考え方を整理します。
アテンションマーケティングにおいては、配信した広告に接触したユーザーの注意をどのくらい引けるかがその後の成果を左右すると考えられています。SNSや動画広告は、視聴を続けるかどうかが瞬時に判断されるため、冒頭で視線を止める設計が不可欠です。
そのため、クリエイティブは、音や動き、対比、意外性といった、一目でインパクトを感じさせる要素を意図的に設計することが重要です。これらは目立たせるための演出ではなく、注意を獲得するための機能としてどう配置するかが問われます。
どこで何を使って視線を止めるかという初動設計が、アテンションマーケティングの出発点なのです。
アテンションを獲得したあとは、その注意をインタレスト(興味・関心)へどうつなげていくかという視点が必要です。その際に意識したいのが、冒頭からその先までが分断されずに継続するストーリー性でしょう。
冒頭で引いた注意が、その後の説明や提案と噛み合っているかどうかが重要です。フックで示した違和感や問いが、理由や背景の説明を経て次の情報につながっていくことで、注意が関心へと移行しやすくなります。
アテンションを起点に理解や納得へと無理なく進める構成を描くことが、結果としてインタレストを育て、次の行動につながる土台になります。

今後は、アテンションを安定して獲得できる施策や枠の選択難易度が高まっていくと考えられます。3Dビジョンなど視認性の高いOOHは、強いアテンションを得やすいことから出稿コストが高騰する可能性があります。
SNSにおいても動画フォーマットが主流となり、短時間で注意を引ける表現や構成に投資が集まりやすい傾向があります。こうした流れを受けて、広告出稿時には、配信量よりもアテンションを条件にしたメニューを基準に検討する場面が増えていくでしょう。
こうした出稿環境の変化に伴い、KPIの考え方にも調整が求められます。視聴完了率や視認時間、滞在時間といった指標に加え、アイトラッキングデータのように、注意の向き方や集中度を捉えるデータがKPIとして活用される場面も想定されます。
今後は、アテンションを前提とした施策設計と、その質をどう評価するかが、より重要なテーマになるでしょう。

SNSも広告も、ユーザーは膨大な情報の中から、継続して視聴するかどうかを瞬時に判断しています。その結果、アテンションは「自然に集まるもの」ではなく、意図して設計して扱うべき資源として捉えられるようになりました。
伝えたい内容があるだけでは十分とはいえず、まず注意を向けてもらって、一定時間滞在させられるかどうかがその後を左右します。そのため、その注意の質や量をどう測るか、どう維持するかまで含めた設計が求められます。
アテンションマーケティングは、ユーザーとの最初の接点をどうつくり、その先につなげていくかを考えるための視点として今後も重要性を増していくでしょう。
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