

「リテンション(Retention)」は日本語で「維持」や「保持」を意味し、リテンションマーケティングは、既存顧客との関係を維持・強化し、リピート購入や継続利用を促すことを目的としており、購入後の顧客体験や利用促進に焦点を当てます。
特にサブスクリプションサービスなど、継続率が売上に直結するビジネスは成果向上に役立つでしょう。
人口減少や国内市場の成熟により、新規顧客の獲得が以前より難しくなり、既存顧客との関係強化の重要性が高まっています。商品・サービス内容だけでなくブランド体験も価値判断の材料となるため、リテンションマーケティングはLTV(顧客生涯価値)の最大化に欠かせません。
パレートの法則が示すように、売上の大部分は上位20%の顧客によって生み出される傾向があります。リテンションマーケティングを取り入れることで、こうした優良顧客を育てるきっかけをつくり、長期的な収益向上につなげることも期待できます。

顧客リテンション(カスタマーリテンション)とは、既存顧客を離脱させずに商品やサービスを長く継続的に利用してもらうことを指します。
その目的を達成するための活動がリテンションマーケティングであり、顧客リテンションは、顧客の成功体験を能動的に支えるカスタマーサクセスと関連しています。
顧客リテンションは、顧客がどれだけそのサービスを人に薦めたいと感じているかを測るNPS(Net Promoter Score)や、解約・離脱率を示すチャーンレート、継続率などをKPIに設定することで離脱の兆候を早期に把握し、適切なフォローや改善策を講じられるでしょう。
競争の激化や人口減少で新規顧客獲得が難しくなるなか、既存顧客との関係を戦略的に強化することは、企業にとってますます重要な取り組みです。

新規顧客の獲得と既存顧客の維持は、目的にも役割にも大きな違いがあります。
アクイジションは、まだサービスを利用していない見込み顧客にアプローチし、最初の利用へとつなげる取り組みを指します。具体的には、広告・SEO・SNS施策、初回割引や入会キャンペーンなどが該当します。
近年は競争が激化しており、広告費の高騰などによって新規獲得にかかるコストが増加傾向にあります。
「1:5の法則」において、新規顧客に販売するコストは既存顧客の5倍かかるとされており、こうした背景からアクイジションは投資負担が大きくなりやすい点が課題といえるでしょう。
また、「初月無料」などの施策は入口としては有効なものの、そのまま継続利用につながらないケースも少なくありません。そのためリテンションマーケティングには不向きでしょう。
前述のとおり、リテンションは、既存顧客に継続利用してもらうための取り組みです。
解約防止や利用促進、エンゲージメント向上などを目的に施策を行うことが多く、新規獲得に比べてコスパが良いと考えられていることから長期的な売上の安定も期待できます。
両者の大きな違いは「対象となる顧客」と「施策の目的」です。アクイジションはまだサービスを知らないユーザーに接点をつくり、まずは一度利用してもらうことを目的としています。
一方リテンションは、すでに利用している顧客の満足度を高め、継続的に利用してもらうことを目指します。
新規獲得だけでは事業は伸びにくく、既存顧客だけに依存しても限界があります。アクイジションは入口を広げ、リテンションは底抜けを防ぐというイメージで、両方をバランスよく組み合わせることが重要です。

リテンションマーケティングは、新規獲得に比べてコスパが良く、中長期的な売上やブランド価値の向上に期待が持てます。
ここでは主なメリットを5つ紹介します。
新規顧客の獲得には広告費やキャンペーン費用などの負担がかかることが多く、CAC(顧客獲得単価)は年々上昇傾向にあります。
たとえば国内の平均リード獲得単価は、2021年が6,000円~10,000円であるのに対し、2025年には8,000円~15,000円と約30%上昇しており、競争の激化や広告費高騰の影響が見られます。一方、既存顧客へのアプローチは費用対効果が高く、少ない投資で成果を得やすい点がメリットです。
継続期間が伸びることで客単価が増加し、特にサブスクリプション型のサービスにおいて売上の向上が期待できます。既存顧客を維持することで、効率的にLTVを高められるでしょう。
顧客の離反を抑えることで収益の変動が小さくなり、経営の予測性が高まります。安定した売上基盤は、次の成長戦略を立てる際の後押しになるでしょう。
長く利用している顧客はロイヤル化しやすく、SNSや口コミで自発的に情報を拡散することがあります。その口コミをきっかけに新規顧客が増加し、なかには広告費をかけて獲得した場合と同等の質を持つ顧客を得られる可能性があります。
くわしくは顧客がファン化した際のメリットを解説した、ファンマーケティングやファンベースマーケティングについての記事をご覧ください。
利用データや行動履歴をもとに、パーソナライズさせた提案やサービス提供が可能です。顧客一人ひとりに適した施策を打ち出せば、リピートや継続利用につながるでしょう。

BtoBビジネスにおいてもリテンションマーケティングは非常に重要です。BtoCビジネスと比べて取引先の数が少なく、契約単価が高額な傾向があり、顧客が離脱した場合の損失が大きくなるためです。
特にSaaSやクラウドサービスなどはサブスクリプション型であることも多く、契約更新率が売上の生命線となるため、導入後の成果創出や活用支援が重要です。
また、デジタル広告の競争激化やターゲティングの難化により、顧客獲得コストが上昇しており、既存顧客の維持がますます重要視されるようになりました。
このような背景をふまえ、導入後のフォローアップや定期的な利用状況の確認、改善提案といった施策が顧客満足度の向上につながると考えられます。信頼関係を深めることで、契約の継続や追加購入の可能性が高まり、長期的に売上を安定させられるようになるでしょう。
新規顧客獲得だけでなく、既存顧客との関係強化を戦略的に行うことが、持続的な事業成長の鍵といえます。

カスタマーサクセスは、顧客が製品やサービスを利用して成果を得られるよう伴走する部門で、その目的は顧客の成功体験を創出し、継続利用へと導くことです。単に契約を維持するための対応ではなく、顧客が製品を活用して最大限価値を実感できるよう支援する必要があります。
リテンションマーケティングは、このカスタマーサクセスの思想や実務と密接に結びつく領域です。顧客が成功体験を得ることにより、製品やサービスの利用量が自然と増加し、その結果として契約継続率の向上、LTVの最大化につながります。
現在は、解約を防ぐだけでなく、顧客が継続利用することで新たな成功を生み出すアプローチが主流です。
たとえば、導入初期にオンボーディングを丁寧に行い、顧客がすぐに成果を実感できるようにすることや、定期的に利用状況を確認して適切な提案やサポートを行います。顧客の状態をヘルススコアで可視化し、問題が生じる前に対処することも効果的です。
このように、カスタマーサクセスとリテンションマーケティングは、顧客の継続利用を通じて成功体験を生み出すことで、長期的な信頼関係と事業成長を支える戦略的な取り組みといえます。

リテンション施策に取り組む際は、顧客がサービスを活用しやすく、価値を実感できる環境を整えることがポイントです。ここでは、代表的な種類とその役割を解説します。
新規顧客がサービスをスムーズに使い始められるように、導入時のサポートやチュートリアルを行います。初期の成功体験を支援することで、継続率向上に寄与します。
顧客情報をもとに、メールやアプリ通知などで適切なタイミングに適切な情報を届ける仕組みが必要です。顧客の行動や利用状況に応じ、段階的にメッセージ配信すれば、利用促進や関係維持につながります。
ジオターゲティングを活用したメッセージ通知については、以下の記事をご覧ください。
コミュニケーション設計による範囲ではありますが、メルマガやプッシュ通知は、既存顧客へのリマインドやキャンペーン案内に有効です。休眠顧客への再アプローチや、サービス利用を開始したばかりの顧客へのフォローにも活用できます。
メールマーケティングについてくわしくは以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
サービスやアプリの操作性を向上させることで、顧客がストレスなく利用できる環境を整えます。使いやすさの向上は、継続利用や顧客満足度向上につながります。
顧客の利用状況をモニタリングし、能動的な課題解決や成功体験の創出をサポートします。問い合わせ対応やトラブル対応が中心の受動的なサポートとは異なり、顧客の成果にコミットする点が特徴です。
顧客同士が交流できる場を設けることで、情報共有や悩み解決を促進します。ユーザーの声が自然に集まるため、潜在的な課題や改善点を可視化しやすい点もメリットです。ブランドやサービスへの愛着が強まり、ロイヤリティ向上にもつながります。
くわしくは以下のコミュニティマーケティングに関する記事もご覧ください。
顧客の利用状況やニーズに応じて、より価値の高いサービスや関連商品を提案します。顧客単価の向上と同時に、より満足度の高いブランド体験を提案できます。

リテンションマーケティングは、既存顧客の成功体験を継続的に支援する取り組みであり、新規獲得に比べてコスト効率が高く、LTVの最大化につながりやすいのが特徴です。
BtoCのみならず、BtoBビジネスにおいても、たとえばSaaS領域では、顧客の継続利用が事業成長の鍵となるため、今後も重要性は増していくでしょう。
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