

ブランドエクイティとは、企業のブランド施策や顧客体験の蓄積によって形成される「ブランドが持つ無形の価値」を指します。単なる知名度や印象にとどまらず、ブランドの評価や選択に影響を与える概念です。
近年、ブランドエクイティが重視されている背景には、市場環境の変化があります。商品やサービスの品質が全体的に向上しコモディティ化が進んだため、機能やスペック、価格だけでは明確な差別化が難しくなりました。こうしたなかで、ブランドそのものに蓄積された価値が選択理由の一部として捉えられるようになったのです。
ブランドエクイティが高まれば、指名買いされやすくなる、多少価格が高くても検討対象に残る、新商品であっても受け入れられやすい、といった特徴が見られます。これは、過去の接触や体験によって形成された印象や評価が購買判断に影響しているためです。
その土台となるのが、「信頼」「好意」「記憶」といった要素です。品質への安心感やブランドに対するポジティブな感情、接触経験の蓄積が重なり合うことで、ブランド固有の価値が形成されていきます。
ブランドエクイティは短期的に生まれるものではなく、こうした要素の積み重ねによって徐々に構築されていくものといえるでしょう。

ブランドイメージとは、消費者がブランドに対して抱く印象や感覚的な評価を指します。「高級感がある」「親しみやすい」「革新的」といったように、ブランドに接した経験やその際の内容を通じて形成される心理的認識です。
あくまで消費者による主観的な印象であり、コミュニケーションや話題性、接触機会の変化によって比較的変わり得る性質を持ちます。
これに対してブランドエクイティは、そうしたブランドイメージも構成要素のひとつとして含みながら、より広い概念として捉えられます。これまで企業がブランド戦略に沿って活動してきたすべてを資産として捉える考え方です。企業目線では財務的な価値をふくむこともあるでしょう。
また、両者の違いは時間軸にも表れます。ブランドイメージは広告表現や接触機会によって短期的に変動する可能性がありますが、ブランドエクイティは継続して蓄積されていくものです。
このように、ユーザー目線で築かれるブランドイメージと、企業の資産として積み上がるブランドエクイティでは、概念も形成プロセスも異なります。

ブランドエクイティの考え方には、代表的な理論としていくつかの枠組みがあります。そのなかでも広く知られているのが、デイビッド・アレン・アーカー(David Allen Aaker)とケビン・レーン・ケラー(Kevin Lane Keller)によるモデルです。
なかでもアーカーは、1991年の著書『Managing Brand Equity』においてブランドエクイティの概念を最初に体系的に整理しました。
彼はブランドエクイティを「ブランド認知」「知覚品質(消費者が認識するブランドの品質)」「ブランド連想」「ブランドロイヤリティ」「その他のブランド資産(特許、商標など法や制度によって保護された資産)」といった5つの構成要素に分解して捉えました。どの要素がどの程度形成されているかを分析することで、ブランドの状態を把握しようとする枠組みといえます。
一方、ケラーは消費者視点でブランドとの関係を構築するプロセスを分類し、ブランドエクイティを捉えました。ケラーの理論は「CBBE(Customer-Based Brand Equity)モデル」と呼ばれ、ブランドが消費者にどのように認識され、どのような関係へと発展していくのかをピラミッド状に示すため、「ブランドピラミッド」とも呼ばれます。
認知(ブランドの認知)・意味づけ(ブランドイメージの創出)・反応(共感・信頼・楽しさ(ポジティブな印象)の構築)・関係性(愛着・ロイヤリティなどの醸成)の4階層で構成され、段階ごとに消費者とブランドの関係性が強固になっていくイメージです。
ケラーが重視したのは、これらの要素が消費者の記憶のなかでどのように結びつき、最終的に関係性へと発展していくかというプロセスです。意味づけと反応を通じて最終的に「人に薦めたい」「このブランドがなければ困る」といった優位性を獲得するのです。

ブランドエクイティが高まると、消費者の選択基準に変化が生まれます。価格や機能のみで比較されるのではなく、ブランドへの信頼や好意が判断材料となるため、価格競争に巻き込まれにくくなるでしょう。
ブランドに対して一定の安心感が形成されている場合、商品やサービスの説明に要する負荷が相対的に下がり、顧客獲得にかかるコストが抑えられる可能性も考えられます。
また、ブランドとの接触や体験が重なり、ポジティブな記憶が形成されると、継続的な利用や推奨といった行動につながる場合もあります。こうした関係性は、短期的な売上だけでなく、安定的な支持基盤の形成にも影響を与えるでしょう。

ブランドエクイティは、広告配信や単発のキャンペーン施策よって即座に形成されるものではありません。日々の発信や顧客体験の積み重ねを通じて、少しずつ形成されていく資産です。
有効なブランドエクイティを獲得するためには、発信内容や世界観、接点ごとの体験設計など、複数の要素を整えていく必要があります。ここでは、ブランドエクイティを構築する主な要素を整理します。
ブランドエクイティを構築するためには、ブランドがどのような価値を提供する存在なのかを明確にし、その軸を継続して示していくことが重要です。品質を強みとするのか、革新性を打ち出すのか、あるいは安心感を届けるのかなど、自社が届けたい価値を一貫して発信していくことが求められます。
継続してメッセージを受け取ることで、消費者のなかでブランドの位置づけが徐々にかたちづくられていくでしょう。共通したイメージが繰り返し示されることで、「このブランドといえば〇〇」といった連想が定着しやすくなり、それがブランドエクイティの土台となります。
ブランドエクイティを形成するうえでは、価値そのものだけでなく、その価値がどのような背景や考え方に基づいているのかを示すことも重要です。同じ「高品質」や「安心」といった言葉でも、どのような思想や姿勢から生まれたのかによって、受け取られ方は変わります。
世界観やストーリーは、ブランドの価値観や成り立ち、目指す姿を伝える役割を担います。それが示されることで、消費者は単なる機能や価格以上の意味を見出しやすくなります。価値が記憶されることで、ブランドとの結びつきが強まっていくでしょう。
消費者とブランドの接点は、広告を目にしたときやWebサイトを閲覧したとき、店舗を訪れたとき、商品を使用したときなど、さまざまな場面で生まれます。その一つひとつの場面で、ブランドの掲げる価値が実感できる体験が提供されているかどうかが重要です。
たとえば、使いやすさを強みとするブランドであれば、商品そのものだけでなく、購入手続きや情報設計のわかりやすさにもその姿勢が表れていることが求められます。
信頼感を軸とするブランドであれば、SNS上の発言やカスタマーサポートの言葉づかいなどにも丁寧で誠実な表現が求められ、挑戦や革新を掲げるブランドは、力強いメッセージや躍動感のある演出が求められることがあるでしょう。
こうした表現の選択は、消費者のなかでブランドそのもののあり方と結びつくため、接点ごとにブランドらしい体験が一貫して感じられると、印象は補強されやすくなるでしょう。
こうした体験が重なることで、ブランドへの信頼は徐々に蓄積され、継続的な利用や支持につながる可能性が高まります。

ブランドメッセージは、内容そのものだけでなく、「誰を通して伝えられるか」によって受け取られ方が変わることもあります。特にアンバサダーやイメージキャラクター、あるいはスタッフなど顔の見える存在を介して発信されることで、情報は記憶に残りやすくなり、感情とも結びつきやすくなるでしょう。
アンバサダーマーケティングの考え方や事例については以下の記事でも解説しています。
ブランドメッセージを発信するうえで著名なタレントを起用した場合、そのタレントに対する好意的な印象が、ブランドの世界観と重なりながら消費者の記憶に蓄積されます。そのため、ブランドエクイティを構築する過程で、アンバサダーやイメージキャラクターの起用が検討されることは多いです。
イメージキャラクターの考え方やアンバサダーを起用したブランドの成功事例については、以下の記事で解説しているのであわせてご覧ください。
ただし、タレントを起用すれば自動的にブランド価値が高まるわけではありません。重要なのは、ブランドが掲げる世界観や価値観と、起用する人物の印象がどのように重なるかという点です。あくまでブランド設計全体の一部として位置づけることが求められます。
たとえばSkettt(スケット)を活用すれば、5,000名以上もの著名なタレントの中からブランドの目指すイメージとマッチした方を選んで交渉でき、プロモーション手法のサポートも受けられます。しかも契約期間も最短1か月〜と、これまでタレントを自社広告に起用したことのない企業も試しやすいでしょう。

ブランドエクイティは、企業が長期的に育てていく資産です。それは一時的なイメージではなく、消費者にとってはそのブランドの価値として蓄積されていきます。
その形成においては、何を発信するのかという軸だけでなく、どのようなストーリーで語られるのか、誰を通して伝えられるのかといった要素も重要です。さまざまな観点で設計することで、ブランドの価値はかたちづくられていきます。
ブランドエクイティを高めるためには、ストーリー・発信手法・発信者を一体として捉える視点が求められるでしょう。
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